空っぽの電車はなぜ減便したり1両編成にしないのか

新型コロナウイルス関連で空気輸送している電車を見かける機会も増えたのではないでしょうか。そこで減便しないのか、もしくは編成両数を減らさないのか、疑問に思われた方も多いと思います。(というか知り合いからそんな質問を受けました)そこで、なぜしないのか、できないのかについて解説しようと思います。

 

まず1両にできないのか、についてですが、最近の電車は2両ないし3両で1セットとなっている場合がほとんどであり、しかも大抵どちらかは中間車なのでシステム的には(2両までは)可能でも現実的には不可能である、という事情があります。

山陽5000系を例にご説明しましょう(この電車が一番理解しやすいと思うので)

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図1:山陽5000系新造時の車両構成


さて、雑ですが図をご用意しました。黄色く塗った車両がモーター車です。そして上のひし形が集電装置(パンタグラフ)を表しています。また、端っこだけへこんでいますが、これは運転台が設置されていることを示します。

そして番号の振り方がおかしいことにはお気づきのことと思います。山陽5000系は3両、4両、6両の3タイプが存在するので、それぞれの構成をわかりやすく示したのです。現在は4両と6両しかないのですが一応組成は可能なので3両も書いておきます。というか3両編成が本題です。

3両編成の場合、1,2,3の3両で3両編成を組みます。この時、2を抜くとそもそも電力が供給されず、1,3どちらかでも抜くと乗務員室がなくなって安全に運転できないどころか、客室から貫通扉を通って走行中も外に出られてしまうので結局1両として外すことができないのです。(もっと細かい話をすれば1,2とB1,B2それぞれでMM'ユニットというものになっており、そもそもこの2両バラせないのです。これは話すとそれだけで記事1本書けてしまうのでこれ以上は割愛します。)

なら客室から出られないようにすれば?と思われるでしょうが、それには大規模な改造(先頭車化改造)が必要になるうえ、そもそも改造に関連する書類を国土交通省に提出し、工事施工認可を受ける必要があります。[1]そして莫大なコストがかかります。さらに山電ならではの事情として直通先の阪神にも同様の対応を迫る必要があります。それだけの手間がかかって改造したとして、全車両に工事が終わるころには新型コロナウイルスの騒ぎも終息していることでしょう。

 

続いて減便の場合。減便とはダイヤ改正と同じであり、国土交通省に申請して許可をもらう必要があります。鉄道が公共インフラである以上、勝手に本数減らすことはできないんです。実際大阪メトロは実施しましたが、大阪府への緊急事態宣言の発令が4月7日、大阪メトロが減便を開始したのが4月25日と、18日間もかかっています。そして、大阪メトロのようにもともと数分に1本レベルの高頻度運転ならともかく、12~15分に普通と特急が1本ずつの地方私鉄に対して減便の許可は下りるのでしょうか?私は利便性維持の観点から許可が下りないと思います。

ただし、新幹線は少しだけ話が変わります。新幹線は、もともと定期列車と臨時列車の2種類があります。これはそもそも新幹線が基本的には通勤路線ではないため時期によって需要に大きなばらつきがあるからです。臨時列車といってもほとんど毎日走っている列車も多いです。この臨時列車についてはもともとJR側の裁量で運行日を決定していたので比較的簡単に止められるのです。

 

 

参考文献

[1]鉄道部の業務について 近畿運輸局鉄道部

https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/tetudoubu.pdf  5ページ目及び8ページ目

2020年6月15日19:13閲覧